計算用ワークステーションでは、計算時間が長くなることも多いため、サーバーに近い耐久性と安定性が必要になります。そのため構成部材は耐久性の高いもので構成されています。そしてマザーボードもワークステーション用のものがあり、長時間の運用を前提とした設計が為されています。
計算用ワークステーションの導入に際して、実験での観測が非常に難しい状態や構造を理論的に明らかにする場合、実験前の仮説の検証を行うことで実験リソースの節約を行う場合や、実験後の結果を理論的側面から説明する場合などがあります。
外部のスパコンの利用とは異なり、一度の購入で時間に関係なく利用できるところが大きなメリットになります。
筐体の選択
科学技術計算機の筐体には、主にタワー型とラック型の2種類があります。

タワー型

タワー型の筐体は空間に余裕がありますので、水冷クーラーの設置や大型GPUの搭載も可能になります。
サイズは搭載するGPUやCPUによって変わりますが、動作音が比較的静かなものが構成できます。

ラック型

ラック型はサーバーラックと呼ばれる専用のフレームに搭載する形になっており、湿度、温度が管理された部屋に設置することが多いです。
高性能なGPUを多数搭載して、強制的に空冷FANによって冷却を行っているので非常に音が大きいですが、同じサイズのタワー型モデルと比較して演算速度が高速である場合が多いです。

OSの選択

Windowsの場合

計算ソフトがWindowsに対応している場合、Windows OSを選択することで通常の業務用PCを兼ねることも可能です。
また、WSL(Windows Subsystem for Linux)などはCPU計算の場合には対応するソフトもあります。
Windowsでの計算(例Gaussian)とLinuxでの計算(例Quantum Espresso)を併用されたい方にお勧めです。

Linuxの場合

遠隔操作で計算を行う場合は、Linux(Ubuntu)をお勧め致しています。
Windows PCからSSH接続で操作することも、また、WindowsのリモートデスクトップでUbuntuのデスクトップへ接続することもできます。
多くの無償の計算ソフトに対応しており、インストールから動かし方やトラブル対応までWeb上に掲載されています。

ワークステーション用ハードウエア

インテル製CPU

CPUはCore XシリーズからXeon Scalableシリーズまでラインナップがあります。
●Core Xシリーズ
ECCメモリには非対応ですが、256GBまで対応するCPUです。
●Xeon Wシリーズ
Core Xシリーズと同じ形状ですがECCメモリに対応しており、512GBまで搭載可能です。
●Xeon Scarable シリーズ 名称としてBronze、Silver、Gold、Platinumまであり、1-4CPUの搭載まで対応するモデルがあります。Platinumに向かうにつれ、全体的な性能は高くなります。

一般的に、IntelのCPUはコア数が多いモデルではクロック周波数が低下する傾向があります。
また、Scarableシリーズではコア数やクロック数だけではなく、CPU内部のメモリである、二次キャッシュの量が性能に大きく影響致します。そのため、計算する内容によってCPUのおおまかな種類を選ぶことになります 。
また、これらのCPUはPCIExpressのレーン数が異なっており、Scarableに向かうにつれて、多くの増設カードを使うことができるようになります。
GPUのPCIExpressの使用レーン数は16以下ですので、例えばCore Xシリーズでは44ですので3枚まで電気的に搭載可能ということになります 。
AMD製CPU

AMDのCPUではEPYCやThreadripperシリーズがワークステーション用に用いられますが、Intel製CPUと比較してコストパフォーマンスが高く、CPU単独での計算の用途に向いています。
一部のソフトではGPUが使えず、コア数が必要なものもありますので、その場合はThreadripper等が性能を発揮致します。

メモリ

メモリは現在DDR4 3200が主流になりつつあります。構造的に大きな物の計算ではメモリも沢山必要ですがエネルギー計算などソフトによってはメモリをそこまで多く必要としないものもあります。そういったソフトは別途スクラッチ領域といったHDDなどに計算の途中経過を残しておく領域が必要な場合もあります。
最近の計算ソフトの多くはメモリをあまり使わない様に計算手法を改良しているものが多いです。そうしたソフトの場合はCPUのクロック数が重要な場合もございます。
ワークステーション用メモリはエラー訂正と修正を行い(ECC)、データフローを良くし、データの信頼性を上げるためのバッファを搭載したメモリを使用致します。ECC Registered(レジスタード)メモリともいいます。
実際の科学技術計算ではデータの信頼性重視のためECCレジスタードメモリを用います。特に高分子の計算など一回の計算に1週間以上必要な計算では必ず用いられます。
ストレージ

計算結果を保存するために必要ですが、通常量子化学計算などは、低いレベルの計算結果を使って徐々に高度な計算へシフトすることも行います。そのため、計算結果の読み込みを行うことも多く、そうしたソフトではアクセス速度がカギになります。
特にWindowsでは起動時間にも大きく影響致しますのでNVMeをお勧め致します。
スクラッチディスクが必要なソフトの場合はNVMeをスクラッチドライブとして用いることで、速度の向上が得られます。
ただしNVMeはマザーボードに直接搭載いたしますので、GPUからの熱の影響を受けやすいです。そこでGPUを複数搭載する場合はSSDドライブにし 、別の場所に設置致します。そうすることでGPUからの熱の影響を最小限にできます。

GPU

GPUはNVIDIA製品を用いるのが主流になっています。選定の基準は、CUDAコア数、クロック周波数、GPUメモリ量等、になります。
画像を扱う計算に関してはGPUメモリの量も重要です。その他の数値計算の場合はGPU搭載メモリの範囲内で収まることが多いです。ただし、複数のGPUを接続した場合は搭載台数に比例して使用するGPUメモリ量が増加致します。
GPU計算中のGPUはCPUによってコントロールされていますので同じGPUでも接続するCPUによってその計算時間が変わることが多いです。
図にありますように、同じグラフィックボードを使った計算でも、最新のCPUの方が計算時間は短くなります。そのため、CPUは最新のものをお選びいただかないとそのGPUが最高の性能を発揮しない可能性があります。

図:LAMMPSでのサンプルプログラム計算時間の計測結果です。各点3回計測後の平均値になります。
縦軸が計算に要した時間、横軸が計算に使用したCPUスレッド数になります。
使用したGPUはGTX1660TIを搭載した同じグラフィックボードになります。
CPUはどちらも4コア8スレッドで、実コア数と同じ4スレッドの所で最も計算時間が短いことが分かります。

科学技術計算用ワークステーション
ラインナップ

タワー型ワークステーションラインナップ (Intel)

タワー型のワークステーションの基本モデルになります。
ECC レジスタードに対応しているモデルは計算開始から1週間以上かかる計算にも対応できるものになっています。
そのため、ECCレジスタードメモリ対応製品はより複雑で時間のかかる計算に向いていると言えますので、スパコン投入前の計算を検証で流したり、スパコンが使えない状況での代替にもご使用いただけます。

CERVO Calculシリーズは簡易ワークステーションになりますので、数値解析より傾向解析に向いています。
長時間の計算も可能ですが、短時間の簡易的な計算やデスクサイドに置いての確認の計算に向いています。

Cervo Grastaシリーズは長時間の重い計算にも耐えられる様、ECCレジスタードメモリも含めて高耐久製品で構成されています。

IS2WはXeon Wシリーズで構成されるワークステーションで、クロック重視の計算に用います。 特に自作のプログラムでマルチスレッドに対応していない計算プログラムにも対応可能です
IS2S, ES2SはXeon Scarableで構成されるワークステーションでIS2Sが1CPU, ES2Sが2CPUで構成されます。
IS2Sはマルチスレッドに対応したプログラムに向いており、メモリ搭載量とスレッド数を増やして計算を加速できます。
ES2SはCPUを二基搭載できるため、メモリも1TB以上搭載でき、消費電力の高いGPUを1基搭載できます。
どのモデルもGPUを一基搭載することができ、GPU計算も可能です。LAMMPSのような分子動力学ソフトやLinux版のGaussianにも向いています。
タワー型ワークステーションラインナップ (AMD)

AMDのワークステーションのラインナップはThreadripperとEPYCがあります。
両者の違いはECCレジスタードメモリに非対応か対応しているか、最大搭載量が256GBか512GBかの違いになります。
有機系の計算でWindows版のGaussianを用いる場合やOpenFOAMなどのCPU動作のCAEソフトに向いています。
ラック型ワークステーションラインナップ(Intel)

ラックマウントタイプの基本モデルになります。

Intelのモデルに限らずラックマウントタイプに関しましてはサーバー用のものが基本になります。本構成はCPUはXeon Scarable搭載モデルになります。
搭載できるGPUの数でモデルが変わります。GPU計算に特化した構成も可能で、最大10台搭載可能のものもあります。
ただし、GPUの大きさや電源構成で制限されますので、ご購入の前に設置場所に200V電源用コンセントと専用タップのご用意が必要です。
また、多数のGPUを同時に動かすことを想定していますので、非常に音が大きく、専用のサーバールームに設置することが前提になります。
GROMACSなどCPUやGPUを同時に全力で計算に使うような用途に向いています。
ラック型ワークステーションラインナップ(AMD)

AMDのモデルではGPUの使用も視野に入れており、GPUだけでなくCPUのスレッド数も必要な計算で用いることができます。Xeon Scarableよりもコア数が多くできますので、CPUコア数が重要な流体解析などで用いられます。

保証・サービス

全商品3年間のセンドバック保証

ワークステーションは全商品3年間のセンドバック保証に対応しています。
尚、1年及び3年のオンサイト保守サービスもあります。ご購入時のみ、ご加入することが可能ですのでぜひご検討ください。
HPC初期導入パック

ワークステーション製品は以下のサービスが別途料金でご利用できます。ご購入時にご利用をご検討ください。

1. OSアップデート・ユーザー作成
2.自動アップデート停止設定
3.USBリカバリ・メディア作成
4.データ復旧サービス・パック 3年
5.データ消去サービス
6.ウイルス対策ソフト・インストール

プリインストールサービス

以下の科学計算用ソフトに関しましてはインストール代行も可能です。

― LAMMPS
高分子の物理的な動きの計算が可能です。計算自体は非常に重くなりがちですがCPUだけでなくGPUでの計算も可能です。

― GROMACS
水溶媒中の生体高分子の構造計算やエネルギー計算などが可能です。
有機溶媒が得意なAMBER(有償ソフトになります)などと組み合わせることも可能です
CPUだけでなくGPUでの計算も可能です。

― Gaussian 16 W (有償ソフトのためライセンスのご購入が別途必要です)
Gaussianは量子化学計算ソフトの中でもスタンダードとまで言われる、非常に有名なソフトです。
有機物の構造計算から、遷移状態、結晶の構造最適化など多くの物質で計算できます。
第一原理計算だけなく、経験的計算にも対応していますので、対象とする物質や物性により計算方法を選択できます。
Windows版のGaussianとなりますのでGPU計算には対応しておりません。
一方、Gauss Viewという可視化ソフトが対応していることと、操作性の高さが魅力です。

― Quantum Espresso
物質の熱伝導率などの物性を算出できる、量子化学計算ソフトになります。
密度汎関数法などに対応しており、電子状態の計算や構造最適化に向いています。