生物のDNA配列の解析に取り組んでいます。私は植物を対象としていて、主に柑橘類やビワについて研究を行っています。DNAはA （アデニン）、G （グアニン）、T （チミン）、C （シトシン）の 4 種類の文字（塩基） から成っていますが、ヒトの場合は30億個、柑橘類では4億個ほどの文字から成る、いわゆるビッグデータなんです。その何億もの文字の配列を高性能なコンピュータで解析できるようになったことで、新しい品種を見つけることができたり、一つの品種の中で変化が起こるメカニズムを調べたりできるようになりました。つまり、今後の農業の役立てるための土台となるデータの解析ということになると思います。

かつては何かの生物の全DNA配列を決めるというのは、国家プロジェクトのようなものでした。私がこの研究を始めた20世紀の頃は、DNA配列が表示されたレントゲンフィルムのようなものを読み取りながら文字を1つずつ入力していくというアナログな手法ですから、植物のDNA解析に数ヶ月単位の時間がかかっていました。しかも、それだけの時間をかけて決められるのはたった数千個程度。ところが今は、コンピュータを使えば数億個をすぐに解析できます。マシンの進歩に合わせて研究しやすい環境になっているのは間違いありません。植物、動物、病原菌など、あらゆる生物を対象にDNA解析の研究は、今後ますます広がっていくと思いますよ。すでに佐賀大学内でも、私以外にカビやいもち病菌、佐賀県の特産品である海苔などを対象としてDNA解析に取り組んでいる先生がいらっしゃいます。

一番のポイントはメモリの大きさです。このワークステーションには256GBのメモリを搭載しています。以前使っていた機種ではメモリが足りなくて1週間かかっていた計算も、今では一晩で終わるようになりました。解析に失敗することもあるのですが、1週間後に失敗が判明するとショックですが、次の日に分かれば、すぐにやり直せます。１つの処理を短縮できた分を、他のデータの処理や考える時間にも充てられるようになった。研究の質やスピードも上がっていると感じます。

OSはリナックスで、購入したワークステーションにはバイオリナックスがインストールされています。この環境は、生物系や農学系、医学といった生化学系の研究者が解析に使う専用ソフトウェアとの相性もよく、スムーズに作動してくれています。ソフトウェア同士を連携させていろいろな解析ができるので、とても便利になりました。

有名メーカー品の半分程度の価格は非常に魅力的でした。そもそも私が重視していたのは、ハードディスクのバックアップ機能だとか企業のサポート体制よりも、「メモリの容量が大きくて、並列で24個計算ができる」という条件をクリアできること。何でもできる機種よりも、シンプルな構成で使いやすくてリーズナブルであるとの判断から、購入を決めました。

このワークステーションは、私以外にも、DNA解析の研究をする先生や学生と共用していますが、今のところトラブルもなく、みんな満足しています。私たちの研究は、超巨大なデータを扱うため、よく「ワークステーションにお金を使うべきだ」と言われますが、用途を絞って使うなら、これほどリーズナブルな製品はありませんよ。