【導入事例 Vol.52】
京都大学 特定准教授 垣内 伸之

■経歴

2007年京都大学医学部卒、神戸中央市民病院、大津赤十字病院勤務を経て、2014年京都大学大学院医学研究科博士課程。2018年同研究科研究員、2019年同研究科助教、2021年京都大学白眉センター特定准教授。

■先生が取り組まれている研究はどんな内容でしょうか?

 消化器内科医としてがん診療を経験し、診療していく中でのさまざまな課題を解決するために、がんの研究を始めました。がんに蓄積する遺伝子の異常をゲノム解析の手法で解き明かす研究をしています。2000年にヒトゲノムがすべて解読され、2010年頃に次世代シーケンサーが登場し、ゲノムを読むスピードが格段に上がったため、いろいろな病気のゲノムを調べることが容易になり、がんのゲノム解析もスタートしました。研究室では最初はがん細胞のゲノムを調べていたのですが、がんになる前の段階、つまり正常の組織の細胞の中に組み込まれた遺伝子の異常を調べています。最初の遺伝子の異常がいつ起こるのか、どのように変異し、がんとして診断に至るのかをゲノム解析することにより、がんの発症経過を明らかにすることに成功しました。
 遺伝子変異の仕組みは、臓器によって異なります。大腸がんや脳腫瘍など、がんの種類によって遺伝子変異の種類が異なるため、その原因もさまざまです。多くのがんは高齢者に発症することからも、加齢は遺伝子変異の原因の一つです。簡単に言うと、細胞分裂する際、ゲノム全体で約30億個の塩基からなる情報を正確にコピーしなくてはならないのですが、ちょっとしたコピーミスが起こることがあります。細胞分裂のたびにコピーミスが蓄積され、変異の原因となります。さらに加えて、タバコや飲酒、紫外線のような環境因子によっても遺伝子の変異が誘導され、がん発症の原因になることもあります。
 これまでは、がん細胞は解析しやすく、正常の細胞は解析しにくかったのです。正常な細胞を調べてみると、がんと同じような遺伝子変異を大量に蓄積しているということが分かってきました。例えば、食道の細胞では、60歳くらいになると、全体の7割ががんで観察される遺伝子変異を持った細胞になっていることがわかってきました。食道の細胞がより多く遺伝子変異をしている人はがんを発症する可能性が高いことや、がん化のリスクを予測できるようになりました。細胞の変化は自然界における種の絶滅や繁栄と似ているところがあり、遺伝子変異を持つ細胞にとって適した環境だとその細胞は増殖し、適してない環境だと減っていきます。遺伝子変異の細胞が多かったとしても、その細胞が優位だから増殖するので、逆に減らせる環境にすることでがんの予防や治療につながる可能性も考えています。

■先生の研究はどのようにがん治療につながりますか?

 おもしろいのは、遺伝子の変異を蓄積すると正常な機能を失って、がんにならないかと思ってしまいますよね。でも逆に遺伝子の変異を持つことでがんになりにくい細胞が見つかったりします。進化の多様性や可能性、機能というのは、我々が想像していた以上のことがあります。病気にかかって炎症や発熱した場合、その臓器のがんの発症率は高くなるのですが、その炎症に耐えるべく進化した細胞の一部はがんになりにくかったりします。体に自然に起こることは実はとても巧みにできていると驚きます。

 また、若い人と高齢者の臓器の細胞のゲノムはまったく違うことがわかってきました。人は誕生し、成長し、老いて、病を経て亡くなるわけですが、遺伝子変異を持つ細胞によって入れ替わることで、老化や臓器の機能低下、特定の病の発症に関わっている可能性もあるのではないかという視点で研究をすすめています。
 人の体のがんになりそうな細胞の割合はもう予測できるのですが、それをコントロールできるようになれば、がんや難病の発症を未然に防ぐことや、悪化を防ぐことにつながるのではないかと思っています。

 我々は2万個の遺伝子を持っているのですが、どう使うかというのは細胞ごとに異なっていて、それを調整するのがエピゲノムなのですが、このエピゲノムもがんや病気に深くかかわっています。今後の課題は、エピゲノムを解析し、解読することですね。

 また、がんの発症を予測できれば、その予防ができます。がんの起源になる細胞をつぶすことで未然にがんを防ぐこともできます。がん細胞が依存していた遺伝子を薬で狙って消去することで、がんが消滅するなど、がん治療への応用が期待できます。現在のがん治療は、確実な方法として手術があり、手術で取り切れない場合は薬で治療をします。ところが、薬の治療効果は20~50%と言われています。抗がん剤の効く人と効かない人を判断するのもゲノムやエピゲノムが関わっているため、解析をすると薬でのがん治療がよくなる可能性も高まります。正常な細胞への影響を解析していけば、がん細胞にだけ効く薬も開発できたらいいなと思って研究しています。

■弊社のNASをどのように活用されていますか?

 ゲノム解析は、膨大なデータ量が必要となります。約30億塩基のゲノムの進化のプロセスを解き明かすためには、一つの細胞のゲノム解析では足らないため、何百、何千という検体の遺伝情報を読んで解析しなければなりません。そうするとデータの量がギガを超え、テラ、ペタという巨大データの容量が必要です。解析はスーパーコンピューターを使って計算するのですが、データ保存領域は高速かつ高性能なものが必要なのですが、そのデータを書き込むディスクは高額です。限られた研究費の中で、節約しながらも、高性能なディスクが必要なのですが、安価で信頼性が高く、十分なデータ量があるアプライド社のNASシステムが最適でした。NASを使用し始めて、スーパーコンピューターのディスク容量を半減できました。その際、高速データ転送がポイントでした。以前は1ギガの帯域のLANでしたが、NASを導入する際、20ギガの高速LANを整備しました。データを管理する際のインターフェースや、システムの柔軟性は、比較した製品の中では一番よかったです。

 また、古い研究のデータも残しておかないといけないため、研究が進むと容量がどんどん膨大になります。通常は1ペタしか対応されていないのが多いのですが、QNAPの製品は4ペタまで対応されているのも魅力でした。さらに、研究室内で稼働している次世代シーケンサー3台分のデータも、一旦NASに集約し、自動でスーパーコンピューターに転送していますが、そのカスタマイズがしやすいのもよかったです。

 また、アプライドさんのサポートが充実しているのも魅力でした。ハード・ソフトともにエラーが起こったりした際、サポートが手厚く、メーカーの人が見てくれるとありがたいですね。時間やコストの節約にもなりますね。セキュリティもしっかりし、情報流出にも配慮したサポートや、リモートサポートの対応など臨機応変に対応してくれました。
 一度に多くの人がデータ転送をしようとするとパンクしそうになるのですが、データの転送が早いので、スムーズに転送できるのもいいですね。  本体からデータを転送する際、自分のパソコンにダウンロードすることなく、QNAPから直接データ転送できるのも便利です。

■今度、期待されることは?

   今後も、データはどんどん増えるので圧縮技術が高くなり、圧縮したまま作業ができるといいですね。ネットワークのさらなる高速化にも期待します。
 さらにいえば、研究者がもっと増えて欲しいですね。海外の学会にいくとレベルの違いを実感します。医学部にいるとどうしても医者の道を選ぶ人が多いのですが、解析とかは研究室にいなくてもできるため、医者よりは自由度は高いので、これからの世代や女性も研究に目を向けて欲しいですね。これからの未来を見据えて研究をしてくれる仲間が増えて欲しいです。

■導入NAS

モデル名 / 型式 NASEXS18T24TS3087XURPR6HS2
プリインストールOS QNAP QuTS hero
シャーシー TS-h3087XU-RP-E2378-64G
マザーボード -
チップセット -
CPU Intel Xeon E-2378 8コア/16スレッド/2.6GHz 最⼤4.8GHz
メインメモリ 64GB UDIMM DDR4 ECC (4×16GB)
SSD / HDD プライマリ 18TB×24 Seagate Exos X18
SSD / HDD セカンダリ 18TB×(16+16) Seagate Exos X18
RAIDボリューム(本体) RAID 6+ホットスペア×2 (実効容量︓約327TB ディスク容量20台分)
RAIDボリューム(拡張) RAID 6+ホットスペア×1 (実効容量︓約210TB ディスク容量13台分) (x2)
ネットワーク(標準) 10GBASE-T×2 + 2.5GbE×2
ネットワーク(増設) 増設カード 5GbE(RJ45)×4ポート Marvell AQtion AQC111C
USB USB3.2 Gen2×4ポート(背⾯、Type-A)
拡張スロット 3スロット
 PCI-Express Gen4 x8 ×1
 PCI-Express Gen4 x4 ×2
※PCI-Express Gen4 x4スロットの内、1つは2.5GbE増設ネットワークアダプタが装備されています
ストレージ -
メモリスロット 4スロット(最⼤128GB 32GB×4)
拡張ドライブベイ 24 x 2.5"/3.5" SATA 6Gbps + 6 x 2.5" SATA 6Gbps
キーボード -
マウス
電源ユニット 800W x2 | 冗⻑電源 100V to 240V AC
外形寸法(約) 約 178(H)×483(W)×630(D) mm 突起部は除く
保証期間 [標準] 3年間センドバック⽅式ハードウェア保証  (保証コード︓KI141122-14)

■製品追加オプション内容

レールキット(TS-H3087XU⽤) RAIL-A02-90
レールキット(拡張エンクロージャー⽤) RAIL-B02
拡張ユニット 2× TL-R1620Sep-RP(SAS 12Gb/s/デイジーチェーン/サイズ︓131.3 × 482.2 × 425.3 mm)  ※550W x2 | 冗⻑電源
ホストインターフェイス 4 x 12Gb/s SAS 3.0 ワイドポート (4ワイドポート) Mini-SAS HD (SFF-8644)
拡張カード Quad-port External SAS 12Gb/s storage expansion card
SASケーブル 4× Mini SAS HD (SFF-8644) to Mini SAS HD (SFF-8644) ケーブル ※標準添付と合わせて合計6本
UPS APC Smart-UPS SRT 2400VA 100V SRT2400XLJ
UPSレールキット APC Smart-UPS SRT 19インチ Rail Kit