【導入事例 Vol.23】
大阪市立大学 准教授 岩崎 昌子

■経歴

1996年、奈良女子大学大学院で博士(理学)を取得。1996年に渡米し、スタンフォード線形加速器センター、オレゴン大学博士研究員として加速器実験に参画。2002年東京大学素粒子物理国際研究センター助手、2004年東京大学大学院講師、2010年高エネルギー加速器研究機構准教授を経て、2016年~大阪市立大学大学院准教授。大型加速器実験による素粒子物理学の研究に従事。

■先生が取り組まれている研究はどんな内容でしょうか?

博士取得からずっと加速器実験による素粒子物理学を研究しています。素粒子物理学とは、私たちの世界は何で作られているのか、それらの間にどんな力が働いているのかを研究する学問です。自然界には、重力、電磁気力、強い力、弱い力の4つの力があることがわかっています。例えば、ボードに貼られたマグネットが落ちてこないのは、重力よりも強い磁力が働いているからです。重力はみなさんとても馴染み深い力ですが、一番弱い力なのです。物が形を構成しているのは、電磁気の力です。それよりも極微な、原子核よりも小さな世界になると強い力と弱い力が影響してきます。力は粒子を交換することで働きます。粒子には物質を作る粒子と力を伝える粒子があり、私たちはこの世界を構成する基本粒子はどのようなものがあるのかを、加速器実験で研究しています。物質を作る粒子には、重い粒子、軽い粒子、いろいろな質量の粒子がありますが、その中の重い粒子は、今の宇宙のどこを探しても存在しません。重い粒子は、宇宙が生まれた時には存在していました。また、物質を作る粒子とは反対の電荷をもった反粒子があります。例えば、電子の反粒子は陽電子です。この反粒子から作られる反物質も宇宙が誕生した時には存在していたはずですが、今の宇宙には反物質が見つかりません。宇宙の誕生時は大きなエネルギーの塊で、ビッグバンが起こり、様々な質量の粒子や反物質がありましたが、時間がたつにつれて温度が下がり、反物質がなくなり、重い粒子がなくなり、軽い粒子だけになってしまいました。重い粒子や反物質を作るには、宇宙誕生の状況を再現しないとできないのです。人工的に、宇宙誕生の高いエネルギー状態(ミニビッグバン)を作りだすのが、大型加速器実験です。大型加速器実験でミニビッグバンを作りだして、宇宙の法則性を探るという研究をしています。

■壮大な話ですね。大型加速器はどんなものなのですか?

人工的に、宇宙誕生の高いエネルギー状態(ミニビッグバン)を作りだすためには、大がかりな加速器が必要なのです。ヨーロッパやアメリカなどで、さまざまな大型加速器実験が行われてきました。現在、日本でも茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構(KEK)で、周長3キロメートルのSuperKEKB加速器を使った大型加速器実験を行っています。このSuperKEKBは、26か国約1000人の研究者たちが集結し、実験している大規模なものです。
周長3キロメートルの加速器も、8m×8m×8mもある測定器も、我々研究者たちで設計し、建設します。2019年3月からは本格的な実験が始まりました。国内外の多くの研究者たちが共同で研究し、私たちが知らない宇宙の法則性を探り出そうとしています。例えば、なぜ宇宙誕生の時には存在していた反物質がなくなってしまったのか。物質と反物質にはどんな違いがあるのだろうか、という研究もそうですね。 ここで、大型加速器実験からは、膨大な実験データが生成されます。膨大なビッグデータを効率よく解析するためには、機械学習、特に深層学習を使うことが有効だと考えられます。機械学習や深層学習は、人工知能(AI)の基盤技術です。そのため、加速器実験への深層学習の適用研究を、大阪大学RCNPプロジェクトとして立ち上げました。素粒子・原子核物理研究者と情報科学研究者とで、加速器実験によるビッグデータの解析に、情報の最先端技術を使う研究です。

■弊社のワークステーションをどのように活用されていますか?

機械学習、深層学習の計算を行うためには、GPUが必須となるため、ワークステーションを導入しました。大量データによる長時間の計算を行うためには、大阪大学にある計算機センターで計算をするのですが、AI研究をしている研究室が多く、ユーザーがとても多いため、計算JOBがなかなか入らない状態です。非常に混んでいる場合は、計算を始めるまでに1週間近く待たなければなりません。それでは研究が進まないため、研究室内でプログラム開発を行うためにワークステーションを購入しました。このワークステーションでプログラム開発を行った後に、大量データの長時間計算を行う時には、大阪大学のGPUを使うことにしています。

■パソコン購入にあたり、重視されたことは?

GPUが必須なので、GPUを搭載していることと、GPUボードやCPUメモリの拡張性を重視しました。そして、コスト、規模ですね。大学の研究室は、研究所の専用施設と比べてそれほど広くないため、小スペースですむもの、静かなもの、特殊な電源が必要ないものが助かります。なおかつ、計算スペックが良いものですね。
ワークステーションを購入したおかげで、研究室で機械学習の計算ができて、研究の効率が上がりました。また、データをたくさん読み込むためにCPUメモリを増量したのですが、比較的リーズナブルだったのもよかったですね。

■導入ワークステーション

モデル名 / 型式 GP-I77800XA3N500TSDDe
プリインストールOS Ubuntu18.04LTS & CUDA10 インストール代行
DeepLearningフレームワーク DeepLearningフレームワークインストール代行
シャーシー フルタワー (BLACK)  230(W)×583(H)×560(D) mm
CPU Core i7 7800X (6コア/12スレッド/3.5GHz/tb4.00GHz/8.25MB/140W) LGA2066, 14nm
マザーボード WS X299 SAGE
チップセット Intel X299チップセット
メインメモリ 32GB (8GB×4) DDR4 2666(PC4-21300)
SSD/HDD プライマリ SSD 500GB 6Gb/s SATA R:550MB/s W:520MB/s MTBF=150万時間
SSD/HDD セカンダリ 2TB (7200rpm, 128MB, 6Gb/s SATA) MTBF=200万時間 高耐久HDD
RAID構成 *データ復旧安心サービスパック ディスク(サーバ/NAS/WS)(3年版) ×2
光学ドライブ DVDスーパーマルチ (ブラック)
描画・計算用 GPUボード 【1GPU】GeForce RTX 2080Ti 11GB GDDR6 (DisplayPort×3、HDMI、USB Type-Cx1) 2スロット
サウンド [オンボード] Realtek® ALC S1220A 7.1-Channel High Definition Audio CODEC
[I/O] オーディオ用ピンジャック(前面:マイク/スピーカー 背面:マイク/スピーカー/ライン入力)
LAN [オンボード] Intel® I219LMx1、Intel® I210AT x1 Gigabit LAN Controller
USB USB3.1 2ポート(背面:2ポート) USB3.0 8ポート(前面:2ポート 背面:6ポート) USB1.1/2.0  4ポート(背面:4ポート)
その他 RJ45(LAN)×2
拡張スロット PCI-Express3.0(x16)×7 (空き5)  ※ (x16/x16/x16/x16 or x16/x8/x8/x8/x8/x8/x8)
ストレージ 1 x M.2 Socket 3, with M key, type 2242/2260/2280/22110 storage devices support (PCIE 3.0 x 4 mode)
1 x M.2 Socket 3, with M key, type 2242/2260/2280 storage devices support (PCIE 3.0 x 4 mode)
8 x SATA 6Gb/s port
2 x U.2 connector*1
Support Raid 0, 1, 5, 10
メモリスロット 8(空スロット×4) ※最大128GB
拡張ドライブベイ 5インチベイ×2(空き1) 3.5/2.5インチシャドウベイ x8 (空き6) 
キーボード Logicool製 スタンダードキーボードK120黒(USB接続)
マウス Logicool製 オプティカルマウス M100r黒
電源ユニット 1200W 80Plus PLATINUM認証
外形寸法(約) 約 230(W)×583(H)×560(D) mm 突起部は除く
保証期間 [標準] 3年間センドバック方式ハードウェア保証

本製品 CERVO Deep Type-DPCS シリーズは、こちらをご覧ください。