【導入事例 Vol.30】
広島大学  准教授 力石 真

■経歴

2010年広島大学大学院国際協力研究科博士課程後期卒業後、同学研究員、特任助教に。2012年東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻日本学術振興会特別研究員PD、2014年広島大学大学院国際協力研究科特任准教授を経て、2017年から現職。専門は土木計画学・交通計画。

■先生の研究内容について教えてください。

生活・交通行動モデルを基盤とした都市・交通計画、リスクマネジメントが専門です。社会の土台となるインフラが経済活動や文化活動に対してどういう役割を果たしているかということや次世代インフラに対する研究を行っています。平成30年7月に広島で豪雨災害が起こってから、災害時の交通マネジメント研究が主要な研究テーマになっています。災害が起きて、人が動きたいけれども道路がない。その時にどうマネジメントしていけばいいのかが主要なテーマで、主に国交省からの委託研究の中で行っています。

■具体的にはどんなことをされているのですか。

一つは短期予想。15分後、30分後にどのぐらい道路が混むのかという予測をしています。例えばAという道路は1000台超えると渋滞がはじまるなど、安定した道路の容量を前提として混み具合を割り出しますが、災害時には1000台を下回る800台で車の渋滞がはじまるなど、道路の容量自体が変わるため、予測が難しくなります。理由としては災害対応車両が入ってきたり、ボランティアの方が道路を歩いていたりと様々。利用シーンにあったアルゴリズムを使って予測する機械学習を用いると予測精度は高いのですが、理論づけが難しい。けれど、それでは世の中には出せないので、機械学習を用いた短期予測がどのようなロジックでなされたのかを可視化し解釈する研究も併せて行っています。
二つ目は選好情報の観測に関する研究です。例えば災害時に臨時で提供される交通サービスなど、現存しないサービスを提供しようとする際には、そちらに切り替える人がどのぐらいいるかを事前に把握することが重要になります。このような顕在化していない選好情報を得る手段として、スマートフォンアプリが役立ちます。例えば相乗りのマッチングアプリは、移動に対する選好を事前にユーザーに提供してもらうことで成立しています。こういった選好情報を獲得する仕組みは災害時にとても役立つのではと考えており、アプリ開発を進めています。あとはインセンティブ。渋滞が発生しそうな時間を避けて通勤してもらった方に対してアマゾンのギフトカードやスターバックスのギフトカードに交換可能なポイントを付与するといった仕組みが導入されている地域があります。このような仕組みを導入することで、災害時の交通需要を誘導できないか検討しています。

■災害時にとても役立ちそうですね。

災害時は渋滞解消のため、皆さんとても協力的なんです。ただ、せっかく協力してくださっているのに、うまくいってないこともたくさんあります。企業の始業時間の変更を例にあげると、災害復興中は8時始業を7時にと早く設定する企業が増えると、逆効果になって渋滞が増すこともあります。せっかく協力してくださっているのに、結果が伴わないのは悲しいですよね。このような問題意識から、適切な時差出勤が達成できるような始業時刻のパターンを導出する研究についても取り組んでいます。

■他にされている研究があれば教えてください。

全国69都市の道路ネットワークの脆弱性を評価する研究についても取り組んでいます。どのような特性を持つ都市の道路ネットワークが特に脆弱かを把握することにより、今後の災害対策に活かせる情報を提供したいと考えています。その他、途上国からの留学生が多いこともあり、途上国の都市・交通問題に関する研究を多く実施しています。
また、災害時のアプリと言っても平時に使えないと普及しません。平時・災害時ともに役に立つアプリを作るためには、産官学の連携が一層重要になると感じています。今後も行動科学的・システム論的な観点から研究を進め、快適で平和な社会環境の構築に貢献していきたいと思っています。