【導入事例 Vol.34】
近畿大学 准教授 柏尾 知明

■経歴

2005年~2010年、日亜化学工業商品開発本部商品開発部にて液晶バックライト用LEDの設計・研究開発を担当。2009年、徳島大学大学院で博士取得。2010年、国立高等専門学校新居浜工業高等専門学校電子制御工学科助教、2017年同准教授。2015年、サザンクロス大学客員研究員、2018年、近畿大学理工学部電気電子工学科准教授。

■先生が取り組まれている研究はどんな内容でしょうか?

研究テーマは、「光線追跡シミュレーションを用いた白色LEDパッケージングの設計」で、現在は主に、「AI(機械学習)を用いたパッケージングの最適化」に取り組んでいます。博士前期課程修了後、青色LEDで知られている日亜化学工業株式会社でLEDパッケージング設計、LED製品の開発を担当しておりましたので、現在もその内容を専門にしております。白色LEDの発光原理は、青色発光素子(チップ)の光が黄色、赤、緑などの蛍光体によって変換され、それらの色の光が混ざり合うことで人間の目には白く見えます。チップを製品に実装できるようにするものをパッケージングというのですが、光の色を変換しながらパッケージングの外に光を出す際に、光が持つエネルギーのロスをできるだけ少なくする必要があります。そこで、効率よく光を取り出すためのパッケージングの構造や材料の研究をしています。具体的には、パッケージングを構成する樹脂、金属などの部材の構造や特性を調整して、パッケージング内での光の損失をできるだけ減らすことで、光の取り出し効率を高めることを目指しております。
ただ、パッケージングの作製には、射出成型金型や抜き打ち金型の製作など、精度の高い加工技術が必要となり長い時間と高いコストがかかります。試作品はいろいろな設計パラメータを変えたものを作る必要があるのですが、いちいち試作をしていたのでは時間とコストがかかってしまいますので、計算機上で3Dモデルを作成し、シミュレーションで光学設計の確認を行います。

■もう少し、詳しく、具体的に教えていただけますか?

例えば、パッケージング内のリフレクタ面の角度や反射方法によって、光の取り出し効率が大きく変わるため、どういった角度や表面状態にすれば良いのか確認する必要があります。計算機上でのLEDの発光シミュレーションでは、ランダムに数百万本の光線の動きを追跡して、統計的に処理しLED全体の発光を確認することになります。反射、屈折、散乱など、パッケージング内で光の振る舞いをシミュレーションし、白色光をより明るくするために、どのようなリフレクタ角度や反射面の状態の組み合わせがよいのかを調べていくという作業を行っていき、それらの設計パラメータを決めていきます。
白色LEDは、室内灯などの市場において広く普及しておりますが、現在市場が大きく広がっているのは、自動車のヘッドライト用途です。当然、室内灯よりも大幅に明るくする必要があり、しかも信頼性が高くないといけません。いくら明るくてもすぐ壊れてしまうものはよくないですよね。できるだけ効率良く光を取り出しつつ、大きな電力を使うため、熱も考えなくてはならないので、光の振る舞いと熱応力を同時に解析しなければなりません。一般的にLEDというと長寿命なイメージがありますが、状況によっては極端に寿命が短くなることもあります。例えば、パッケージングには銀メッキが使用されていますが、気密性が低い設計の場合、温泉地では銀メッキが硫化して真っ黒になってしまいます。そうすると銀メッキの反射率が低下し、明るさが低下してしまいます。したがって、温泉地のように大気中の硫化水素濃度が高い場所でLEDを長期間使用するのであれば、硫化水素の影響の少ないパッケージングにしなければなりません。特に自動車の場合、不灯は許されませんので、信頼性の高いパッケージングにする必要があります。車載用には、熱の影響を受けやすい材料を使用しないなど、一般的なLEDとは異なるタイプのパッケージングが使用されています。また、より低い消費電力でより明るいものが必要となりますので、光学設計を工夫する必要がありますが、明るさと信頼性はトレードオフの関係になる場合が多いので、バランスの難しい設計が求められます。。

■弊社のワークステーションをどのように活用されていますか?

最近は、機械学習を使ったLEDパッケージングの最適設計を研究しています。これまでの研究で、ニューラルネットワークなどの機械学習モデルを使用して、設計パラメータやサンプル画像から白色LEDの光学特性を予測できることがわかってきました。そこで、機械学習によるアプローチで、LEDパッケージングの解析やモデリングを行っています。例えば、材料の反射率、屈折率、形状、発光素子の明るさなどの設計パラメータから、全光束や色度などの光学特性を予測できるモデルを獲得し、そのモデルから設計パラメータの最適化を行うことができます。光線追跡シミュレーションでは、何百万本もの光線を追跡するため、高性能な計算機が必要となります。白色LEDは蛍光体を含むため計算量が多く、従来のパソコンでは場合によっては、1つのモデルに数日かかることもありました。しかし、高性能なワークステーションを使うことで、数時間で1つのモデルのシミュレーションが完了させることができます。また、ディープラーニングで、白色LEDの画像から明るさを予測する研究もしているのですが、そこでもワークステーションが活躍しています。これまでの研究では、蛍光体量とレンズ形状から、白色LEDの明るさを推定できることがわかりました。LEDを光らせて測定することなく、LED画像のみから明るさが推定できるため、本手法は画期的な設計支援ツールになるのではないかと期待しています。さらには、ニューラルネットワークがまだ設計者が気付いていないような重要な設計パラメータを教えてくれる可能性もあるのではないかと考えています。ディープニューラルネットワークによる画像の学習は計算量が非常に多く、とても時間がかかるのですが、高性能ワークステーションで計算時間を大幅に短縮することができております。

■今後、取り組んでいきたい研究などはありますか?

より良いモデルを得るためには、学習データを増やすことが必要となりますが、設計パラメータを振った実サンプルのデータを測定することには限界がありますので、シミュレーションで学習データを増やしていくことを考えております。将来的には、時間のかかるシミュレーションの代わりに、機械学習を用いてLEDパッケージングの最適設計を行うことを目指しております。

■導入ワークステーション

モデル名 / 型式 WST-XW2195S3Q1TTNVM
外形寸法 236(W)×540(H)×560(D) mm ※突起部は除く
プリインストールOS Ubuntu18.04LTS インストール代行
CPU Xeon 18-Core W-2195 2.3GHz (最大4.3Ghz) 24.75M 140W /14nm/DDR4-2666
マザーボード MBD-X11SRA-O (Xeon-W)
チップセット Intel C422 Express チップセット 最大512GB Single Socket R4 (LGA2066)
メインメモリ 256GB (64GB×4) DDR4-2666 LR-DIMM 1.2V CL19 4RANK Registered ECC DIMM
SSD/HDD プライマリ 1TB M.2 NVMe Read 最大3500MB Write 最大3300MB/Sec 1GB LPDDR4キャッシュ
SSD/HDD セカンダリ 1TB (7200rpm, 128MB, 6Gb/s SATA) MTBF=200万時間 高耐久HDD
光学ドライブ BD-R書き込み16倍速 スーパーマルチブルー (ブラック)
内蔵グラフィック なし
追加グラフィックボード NVIDIA Quadro RTX8000 48GB GDDR6 (DisplayPort ×4, USB Type-C x1)
サウンド [オンボード] RealTek ALC 1220 7.1 HD Audio
LAN [オンボード] Intel® PHY I219LM & Aquantia 5G LAN chip AQC108 Ethernet
USB [オンボード] Intel® PHY I219LM & Aquantia 5G LAN chip AQC108 Ethernet
その他 7.1 HD Audio with optical S/PDIF
拡張スロット Intel® C422 controller for 6 SATA3 (6 Gbps) ports; RAID 0,1,5,10
*iRST enabled, only SATA2 to SATA5 support RAID.
ストレージ RJ45(LAN)×2
メモリスロット 8(空スロット×4) ※最大512GB
拡張ドライブベイ 3 PCI-E 3.0 x16,
1 PCI-E 3.0 x4
キーボード Logicool製 スタンダードキーボードK120黒(USB接続)
マウス Logicool製 オプティカルマウス M100r黒
電源ユニット 1350W 80Plus PLATINUM認証
外形寸法(約) 1350W 80Plus PLATINUM認証
保証期間 [標準] 3年間センドバック方式ハードウェア保証

本製品 CERVO Deep Type-DPXS シリーズは、こちらをご覧ください。