【導入事例 Vol.51】
筑波大学 助教 牛島 光一

■経歴

牛島 光一(うしじま こういち)
2010年筑波大学 大学院 博士後期課程修了。2013年から筑波大学助教に就任。政策・プログラム評価研究室所属。2009年第12回森口賞 懸賞論文 入選。2012年第7回応用計量経済学コンファレンス 優秀論文賞を受賞。専門分野は、教育経済学、開発経済学、医療経済学など。

■先生の研究室では、発生した事象に対して因果効果を調べる研究に多く取り組まれているようですが、この研究に興味を持ったきっかけを教えていただけますか?

 因果効果を調べること自体に興味があるのではなく、興味があることに対して必要だから研究に用いているというのが正しいでしょうか。私が興味を持っているのは、“貧困や紛争の問題”です。世の中ではいろいろなことが起きていますが、それは人々が意思決定をした結果です。なぜ貧困や紛争が起こるのか? その議論をするためにデータからひもといていく因果推論が有用なので取り組んでいるというわけです。

  ちなみに学部は数学科だったのですが、進学して学んでみると、学んだ知識を貧困や紛争問題を解決することにつなげるのは難しいと気づきました。将来の進路をどうするか考えたころ、1998年アマルティア・センが開発経済学の分野においてアジア出身者で初めてノーベル経済学賞を受賞し、注目を集めていました。このことを知り、開発経済学なら自分が興味を抱いている貧困や紛争の問題について取り組めるのでは?という可能性を感じて、筑波大学の大学院への進学を決めました。

■具体的に因果推論とはどういうことなのでしょうか。

 例えば、大学教育には税金が投入されています。それは大学教育を受ける学生にとってもちろんいいことですが、社会に貢献する人材育成が期待できるから、国の予算が投入されているわけです。つまり、社会に価値が還元されるということが前提となって、投資されています。しかし本当に大学教育に予算を投入した結果、社会で価値を生むことにつながっているのでしょうか。因果推論はこのような問題を調べるために用います。

 企業に入社したときの給与を見てみると、高卒よりも大卒の方が平均的な給与は高いというのが一般的です。でも給与が高いのは、本当に大学教育だけのおかげなのでしょうか。平均的に高いのは大学入試に受かっているからで、平均的に能力が高いということが賃金に反映されている可能性があります。大卒者の賃金が高いうちのどれくらいがその人のもともとの能力ではなく、大学教育によるものなのかを調べるのが因果推論です。私の専門分野である教育経済学や開発経済学などでは因果効果を調べる研究が盛んに行われています。ちなみに、私の研究室の場合は、投入されている税金よりも高い教育効果があるはずです(笑)。

■研究室で取り組んでおられる「サブサハラ・アフリカ」の道路と経済発展の研究について詳しく教えていただけますか?

 2000年9月に開催された「国連ミレニアム・サミット」で採択された国連ミレニアム宣言をもとにまとめられた国際的なMDGs(ミレニアム開発目標:Millennium Development Goals)というものがあります。MDGsの目的は開発途上国の開発にあり、それを実現するために、2015年までに達成すべき8個の目標が掲げられました。昨今、注目を集めているSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)の前身にあたり、SDGsの考え方を深く理解するうえでも重要な存在です。

 MDGsでは教育や医療についてよく触れられていましたが、実際には教育や医療よりも道路などのインフラ建設のために多くの予算が投じられていました。道路建設は途上国において最も支出割合が高い公共政策であるのと同時に、開発支援事業としても重要な位置づけにあるものです。しかし残念ながら、民族優遇政策として利用されやすいという特徴もあります。民族優遇は政府の説明責任や正当性の欠如によって引き起こされ、経済成長を阻害する要因の一つになっていると考えられています。そういう背景からも、道路建設の因果効果について調査する必要があるのです。交通網が作られたときにどういうことが起きているのか?ということについては、インドでの研究や日本の明治期の研究があります。しかし、歴史データであるため、利用できる情報に限界があります。まだまだ分からないことがたくさんあるのです。

 私たちが研究する対象に選んだサブサハラ・アフリカでは、交通網がほとんど整備されていない状態から道路建設が進んでいる状況を観察できます。2000年くらいから道路建設ラッシュに入ったサブサハラ・アフリカを研究することで、インフラが整備された地域は本当に豊かになるのかという因果効果を調査しています。

 またサブサハラ・アフリカでは、道路での輸送は国内輸送の根幹になっているのにも関わらず、道路建設費の中抜きが頻繁に行われ、その影響で品質の低い舗装道路が作られているといわれています。質の悪い道路は1年ほどで壊れてしまい、雨期には通行不能になるそうです。しかし道路の質に関するデータの不足から、道路が壊れているのは民族優遇の結果なのか十分に議論できる材料がありません。そこで学生が入手してくれた16万本分の道路の空間情報のデータをもとに、衛星データを活用して、現在ある道が舗装されているかどうか予測するモデルを作ろうとしています。

■弊社から購入いただいたWorkstationはどのように活用しているのですか?

 現在、私たちはサブサハラ・アフリカの空間情報と衛星データをもとに15年分の道路建設状況を予測しています。Workstationはこのための機械学習に用いています。予測モデルを構築した後は学習とは異なる時期の衛星データを用いて、道路が舗装されているかどうかの予測値を出してもらいます。また、予測モデルの妥当性も評価しなければなりません。この機械学習は膨大な計算量が必要なので、高性能のWorkstationを導入させていただきました。

■では、その予測値をもとにどう経済発展につなげていくのでしょうか。

 衛星データをもとに得られた予測値が素晴らしいのは、どこの舗装道路が壊れているのかが分かることです。アフリカでは舗装道路が壊れると、アスファルトをはがすことがあるようです。はがさないとタイヤがパンクしてしまうからだそうです。しかし、行政上の記録では舗装道路のままになっています。つまり、実際に舗装道路が走れる状態なのか、もしくは舗装が壊れているのか、行政上の記録と実態で異なる場合があるのです。さらにいえば、いつ壊れるのか知りたいじゃないですか。サブサハラ・アフリカに限らず、行政がそういう情報を収集することは難しいので、私たちが機械学習によって画像から判別しています。そのような情報をもとに道路建設が地域経済を活性化できるのかどうかを解明することでより効率的な経済政策の立案につなげていけるのではないかと考えています。

■これからこの研究はどういう分野で生かせそうでしょうか?

 現在、サブサハラ・アフリカの空間情報15年分をまとめている段階なので、それをまとめて因果効果を掘り下げていきたいです。経済活動が活発化するためにはどこに道路をひけばいいのか? それを解き明かしていくことで、途上国の発展に少しでも貢献したいです。

参考URL
Professor | 筑波大学 政策・プログラム評価研究室 (ushislab.wixsite.com)
USHIJIMA, Koichi 牛島 光一 - Research (in Japanese) (google.com)

■導入ワークステーション

モデル名 / 型式 WST-RTP5995WXS3Q1TTNVM
プリインストールOS Windows 10 Pro 64bit
シャーシー FD-C-DEF7X-01 (Define 7 XL Black Solid)
マザーボード SuperMicro MBD-M12SWA-TF-O / 3Y
チップセット AMD WRX80 チップセット
CPU AMD Ryzen Threadripper Pro 5995WX (64C/128T/2.7/Max4.5GHz/288MB/280W) sWRX8 7nm
プロセッサー・ファン 水冷 CPU クーラー(水冷一体型/360mm ラジエター/120mm FAN
メインメモリ 512GB (64GB×8) DDR4-3200 1.2V 2RANK Registered ECC DIMM
ストレージ(標準) 1TB M.2 NVMe SSD R:5150MB/s W:4900MB/s
光学ドライブ DVDスーパーマルチ (ブラック)
内蔵グラフィック ASPEED AST2600 BMC graphics
グラフィック(外部増設) NVIDIA T1000 8GB GDDR6  (miniDPx4) PCI-E3.0x16
サウンド [オンボード] ALC4050H + ALC1220 7.1 Channel HD Audio
ネットワーク(標準) [オンボード] Marvel AQC113C 10G Ethernett & Intel i210AT 1G Enternet Controller
ネットワーク(無線) なし
エージング [無料] 12時間エージング
キーボード オリジナル ⽇本語アイソレーションキーボード
マウス 光学式6ボタンマウス(6段階DPI切替機能) ※キーボートとのセット品
電源ユニット 1200W 80Plus PLATINUM認証 フルモジュラー仕様
外形寸法(約) 240mm(W) x 566mm(H) x 604mm(D) ※突起部は除く
保証期間 3年間センドバック⽅式ハードウェア保証

■導入ワークステーション

モデル名 / 型式 CERVO-Deep GP-XS6238Rx2AS3Q2TTSDDe
プリインストールOS Ubuntu20.04LTS & CUDA11 インストール代⾏
DeepLearningフレームワーク NVIDIA Docker(TensorFlow / Pytorch / Chiner)インストール代⾏
シャーシー フルタワー型 (BLACK)  240mm(W) x 566mm(H) x 604mm(D)
増設冷却FAN [標準] 前⾯︓140mmFANx2 背⾯︓120mmFANx1
マザーボード EP2C621D12 WS
チップセット Intel® C621 chipset  最⼤768GB USB3.1/SATA3.0/2LAN
CPU 【2CPU】Xeon GOLD 6238R 2.20GHz(最⼤4.00GHz) 28C/56T 38.5MB DDR4-2933 TDP=165W
プロセッサー・ファン 4U Active CPU Heat Sink  3,800 RPM 38db LGA3647 Narrow TDP205W対応
メインメモリ 768GB (64GB×12) DDR4-3200 1.2V 2RANK Registered ECC DIMM
ストレージ(標準) 1.92TB SSD 6Gb/s SATA R:550MB/s W:530MB/s MTBF:200万時間 ⾼耐久SSD Samsung PM893シリーズ
ストレージ 14TB (7200rpm, 512MB, 6Gb/s SATA) MTBF=250万時間 ⾼耐久HDD
光学ドライブ DVDスーパーマルチ (ブラック)
描画・計算⽤ GPUボード NVDIA RTX A6000 48GB GDDR6 (DisplayPortx4)PCI Express 4.0 x16
計算⽤ GPUボード 【2GPU】NVDIA RTX A6000 48GB GDDR6 (DisplayPortx4)PCI Express 4.0 x16
サウンド [オンボード] Realtek® S1220A 7.1-Channel High Definition Audio CODEC
ネットワーク(標準) [オンボード] 4ポート Marvell 88E1543 1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T
ネットワーク(増設) 10Gigabit I540-T2 デュアルポートサーバアダプタ
USB USB3.0 2ポート(前⾯︓2ポート 背⾯︓2ポート)
サウンド (I/O) オーディオ⽤ピンジャック(前⾯︓マイク/スピーカー 背⾯︓マイク/スピーカー/ライン⼊⼒)
その他 RJ45(LAN)×4、IPMIX1
拡張スロット  - 4 x PCIe 3.0 x16 (x16 mode)
 - 3 x PCIe 3.0 x16 ( PCIe x8)
ストレージ Intel® C621: 14x SATA3 (including 2 SATA DOM ports and 2 M.2 ports)
M.2 x2 (2230/2242/2260/2280, support PCIE(x4) or SATA3 M.2
メモリスロット 12(空スロット×0) ※最⼤1536GB
拡張ドライブベイ 5インチベイ×2(空き1)  内部3.5/2.5インチ×6 内部2.5インチ×2
キーボード オリジナル ⽇本語アイソレーションキーボード
マウス オリジナル 光学式6ボタンマウス(6段階DPI切替機能) (セット)
電源ユニット 2000W 80Plus Platinum認証 フルモジュラーケーブル ※100V運⽤時は、最⼤1500w出⼒ 200V運⽤時は、最⼤2000W出⼒
外形寸法(約) 約 240(W)×566(H)×604(D) mm ※突起部は除く
保証期間 3年間センドバック⽅式ハードウェア保証
GeforceシリーズのVGAカードは、1年保証となります。 (保証コード ︓IK021222-02)