【導入事例 Vol.28】
京都大学 大学院 准教授 肥後 陽介

■経歴

京都大学工学部交通土木工学科卒業。2004年、京都大学工学研究科土木工学専攻、博士取得。2006年、財団法人地域地盤環境研究所、2006年京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻助手、2013年京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻准教授。

■先生が取り組まれている研究はどんな内容でしょうか?

地盤工学、土の力学を研究しています。要するに、土に力がかかった時にどれだけ変形するのか、土の中の水の流れ具合などを調べるために、実験をしてモデルを作成し、現象を予測するという研究をしています。例えば、川の堤防ですが、膨大な土の粒の集まりで形成されているのですが、全部の土の粒がどう変化するのかを追いかけて予測するのは不可能です。通常は、粒の集まりを平均化して、ある形に近似して予測するのですが、最近はコンピューターの能力の向上、物体の内部を可視化できるX線CTの開発など、技術が急速に発展したので、ミクロの土の粒の力学からマクロの堤防の変形を予測することを研究しています。細かい現象と大きな現象をつなぎ、土の粒から考証し、堤防が決壊する原因を探ります。これこそ、本当の物理だと思っています。
地震が起こった時も土が変形するのですが、土が液状化すると堤防が崩れます。液状化をはじめ、地震時に何が起こっているのかを土の粒レベルの物理では、誰も説明できません。なぜなら、粒がどんな挙動をしているのか、あまりにも早い現象なのと観察するのも難しいため、解明するのが困難だからです。ですので、さまざまな粒と粒の形状や性質を考慮し、ミクロを観察して、マクロのスケールに広げていくのが大切なのです。日本全国の堤防をコンクリートで作れれば強いのですが、1万6000キロ近くある堤防をすべてコンクリートで作るというのは費用面では難しい。そのため、ほとんどの堤防が土でできているわけです。堤防は一部が決壊するとそこを補強しても、ほかの弱い部分が決壊してしまうこともあります。降雨や地震で地盤がどのように変化していくのかを土を解析し、研究しています。堤防というと高さや形状などの構造が重要と言われますが、土の粒スケールで起こっている物理を観察するのも必要です。京都大学は研究を重視する大学なので、10年20年後に真実に基づいた予測法を作っていくのも大切だと思っています。

■土の力学を研究されていて、明らかになったことはありますか?

土は、乾いた状態に水を入れると弱くなります。簡単な話で言うと、泥団子にコップで水をかけると泥団子は崩れてしまいますよね。このような現象が堤防にも起こります。最初は堤防も乾いた状態なのですが、河川の水位が上がると水が浸み込んでいって、土が弱くなって決壊します。乾いた状態を不飽和、水で満たされている状態を飽和というのですが、不飽和から飽和に至るときに土がどれぐらい弱くなるのかを実験で確かめます。土と土の間にある水は表面張力で土の粒を引き寄せ合っており、液架橋と呼ばれます。この液架橋の数がどれだけ土を強くするのかと関係しているということが観察によって判明しました。このことは以前から予測はできたことなのですが、観察によって明らかになり、現象を解釈できるようになりました。このような誰でも理解できる物理で積み重ねていくのが大事ですね。
研究していくと先人の知恵ってすごいなと感じることが多々あります。研究した結果が、もうすでに先人によって使われていたということもあります。原始時代から川の氾濫はあったと思うのですが、先人たちは感覚で土を盛って堤防を作っていたと思うのです。研究がその説明や解釈を与えることになっています。
堤防の強さは、高さだけでなく、「粘り強さ」が最近のキーワードになっています。粘土などの細かい土に適度な水を加えると粘り強い土になります。粘土と砂を比較すると砂の方が強いのです。しかし、深い場所には砂、表面には粘土があることで、川の水が堤防を越えても侵食しにくい粘り強い堤防になります。洪水時も堤防の高さを維持するために、適切な場所にやコンクリートなどの対策工を施すなどのアイデアを、堤防が決壊する要因となっている物理に基づいて提案していくことが重要です。

■弊社のワークステーションをどのように活用されていますか?

X線CTのデータ処理と画像解析に使っています。X線CTで撮影した画像は1024×1024×1000画素という大きさになります。この膨大なデータ量の画像を大量に処理するため、メモリとグラフィックを重視し、それに適したワークステーションを購入しました。以前のパソコンと比べて、およそ1.5倍処理速度が速くなったと学生も喜んでいます。今は、5㎟×5mmの領域でしか土の粒を見ることができないのですが、将来は5㎝×10㎝のボリュームで観察がしたいですね。現在のメモリでは難しいので、もっとメモリとグラフィックを高められたら、もう少し大きな領域を観察できるのでうれしいですね。スーパーコンピューターを使うのは、特別なプログラミングと大きな費用と手間が必要となるので、研究室での研究にはワークステーションぐらいのスペックが調度いいですね。土の力学にも先端的な理論を持ち込んで、地盤力学分野、土木分野のランクアップを目指していきたいですね。

■導入ワークステーション

モデル名 / 型式 CVW-I79800XAS3Q500TSD
プリインストールOS Windows 10 Pro 64bit
DVD再生ソフト / その他 POWERDVD12 OEM版
CPU Core i7 9800X (8コア/16スレッド/3.8GHz/tb4.4GHz/16.5MB/165W) LGA2066 14nm
マザーボード X299Taichi XE
チップセット インテル X299 チップセット ATX LAN トリプルM.2
メインメモリ 128GB (16GB×8) DDR4 2666(PC4-21300)
SSD/HDD プライマリ SSD 500GB 6Gb/s SATA R:560MB/s W:530MB/s
SSD/HDD セカンダリ 2TB (7200rpm, 128MB, 6Gb/s SATA) MTBF=200万時間 高耐久HDD
光学ドライブ DVDスーパーマルチ (ブラック)
内蔵グラフィック なし
追加グラフィックボード NVIDIA Quadro RTX5000 16GB GDDR6 (DisplayPort ×4, USB Type-C x1)
サウンド [オンボード] Realtek ALC1220 7.1-Channel High Definition Audio CODEC
[I/O] オーディオ用ピンジャック(前面:マイク/スピーカー、背面:マイク/スピーカー/ライン入力)
LAN [オンボード] Intel I219V & I211AT Dual Gigabit Ethernet
LAN増設 [オンボード]  Intel® 802.11ac WiFi( IEEE 802.11a/b/g/n/ac Bluetooth 4.2 / 3.0)
USB USB3.1 Gen2×2ポート(背面 Type-A、C各1) USB3.1 Gen1×6ポート(前面:2ポート 背面:4ポート) 、USB1.1/2.0×2ポート(背面)
その他 RJ45(LAN)×2 S/PDIF Out(Optical)×1 PS/2x1   (シリアルポート追加増設可)
拡張スロット  - 4 x PCI Express 3.0 x16 スロット*
 - 1 x PCI Express 2.0 x1 スロット
 - 1 x 垂直 M.2 ソケット (Key E)、には WiFi-802.11ac モジュールが搭載
ストレージ - 8 x SATA3 6.0 Gb/s コネクタ、サポート RAID (RAID 0, RAID 1, RAID 5, RAID 10,
 - 2 x SATA3 6.0 Gb/s コネクタ (ASMedia ASM1061)、サポート NCQ、AHCI
 - 1 x ウルトラ M.2 ソケット (M2_2), M Key タイプ 2230/2242/2260/2280/22110
 - 2 x ウルトラ M.2 ソケット (M2_1 および M2_3), M キータイプ 2230/2242/2260/2280
メモリスロット 8(空スロット×4) ※最大128GB(64bitOS時)
拡張ドライブベイ 5インチベイ×2 (空き1) 3.5/2.5インチシャドウベイ×5 (空き3)
キーボード Logicool製 スタンダードキーボードK120黒(USB接続)
マウス Logicool製 オプティカルマウス M100r黒
電源ユニット 850W 80Plus GOLD認証 Seasonic FOCUS+ シリーズ フルモジュール・ハイブリッド電源
外形寸法(約) 約236(W)×540(H)×560(D) mm 突起部は除く
保証期間 [標準] 3年間センドバック方式ハードウェア保証

本製品 CERVO Calcul Type-TXS シリーズは、こちらをご覧ください。